「特定技能の外国人を採用した場合、どこまで仕事をお願いできるの?」
介護事業者様からは、「夜勤をお願いしても大丈夫?」「居室や施設内の清掃はできる?」「デイサービスの送迎はお願いできる?」といったご質問をよくいただきます。
特定技能「介護」の外国人は、食事・入浴・排せつ介助などの身体介護を中心に、介護に付随するさまざまな業務を担当できます。ただし、何でも自由にお願いできるわけではありません。
📋 この記事でわかること
- 特定技能「介護」で任せられる業務と、任せられない業務の線引き
- 夜勤・清掃・送迎・記録それぞれの考え方
- 2025年4月に解禁された訪問系サービスの要件
- 受け入れそのものが認められない施設・雇用形態
今回は、介護事業者様向けに、特定技能「介護」でできる仕事・注意が必要な仕事・できない仕事をわかりやすく整理します。
※本記事は2026年9月時点の制度をもとに作成しています。
01. 特定技能「介護」の基本となる仕事
特定技能「介護」で中心となるのは、利用者の心身の状態に応じて行う身体介護等の業務です。具体的には、次のような業務があります。
- 食事介助/入浴介助/排せつ介助
- 移乗・移動介助/着替えの介助
- 口腔ケアの補助/見守り
- レクリエーション/機能訓練の補助
出入国在留管理庁は、介護分野の業務を「身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)」としています。
💡 つまり
特定技能外国人は単なる「介護補助」ではなく、一定の技能・日本語能力を確認されたうえで、介護職員として働く人材です。
02. 一目でわかる|できる仕事・できない仕事
| 業務 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 食事・入浴・排せつ介助 | ⭕ できる |
| 移乗・移動介助 | ⭕ できる |
| 見守り | ⭕ できる |
| レクリエーション | ⭕ できる |
| 機能訓練の補助 | ⭕ できる |
| 介護記録・申し送り | ⭕ できる |
| 居室の清掃・洗濯 | ⭕ 介護に付随する範囲で可能 |
| ベッドメイキング・シーツ交換 | ⭕ 介護に付随する範囲で可能 |
| 掲示物の管理・物品補充 | ⭕ 可能(関連業務の例示) |
| 夜勤(一人夜勤を含む) | ⭕ 対象施設で可能 |
| 訪問介護などの訪問系サービス | ⭕ 要件を満たせば可能(2025年4月〜) |
| 利用者の送迎・運転 | ⚠ 条件・業務内容の確認が必要 |
| お泊りデイの夜勤 | ❌ 不可 |
| 労働者派遣での受入れ | ❌ 不可 |
| サ高住・住宅型有料老人ホーム (特定施設入居者生活介護の指定なし) |
❌ 不可 |
| 清掃だけを担当 | ❌ 不可 |
| 介護と関係のない業務への専従 | ❌ 不可 |
ここから、それぞれ詳しく見ていきましょう。
03. 夜勤はできる?
結論:特定技能外国人も夜勤に入ることができます
特定技能「介護」の外国人だからといって、夜勤が禁止されているわけではありません。
厚生労働省の委託を受けて外国人介護人材支援を行う国際厚生事業団(JICWELS)のFAQでも、特定技能外国人の受入れ対象施設に該当するサービス内であれば、夜勤業務を行うことができるとされています。
夜勤では、例えば次のような業務を担当することが考えられます。
- 就寝介助/起床介助
- 夜間の巡視/体位交換
- 排せつ介助/朝食介助
- 介護記録
💡 技能実習との違い
技能実習生の夜勤は日本人職員と一緒に行うことが条件とされていますが、特定技能では単独での夜勤も認められています。日本人職員と同じシフトに入ってもらえるのが、特定技能の大きな利点です。
ただし、最初から一人夜勤は慎重に
入社直後から一人で夜勤を任せるのはお勧めできません。外国人スタッフに限りませんが、夜勤では利用者の急変や転倒、緊急時の判断なども必要になります。
特に外国人スタッフの場合、次のような点を確認しながら、段階的に夜勤へ入ってもらうことが大切です。
- 利用者の名前と状態を把握できているか
- 申し送りの内容を理解できるか
- ナースコールへ適切に対応できるか
- 緊急時に日本語で報告・連絡できるか
- 夜間の対応手順を理解しているか
JICWELSでも、安全に業務を行えるまでの一定期間は、経験のある職員とチームでケアに当たるなど、事業所で順応を支援する体制を取ることが求められています。この期間の目安は6か月とされており、最終的には事業所の判断で夜勤業務へ導入していくこととなります。
⚠ 注意:「お泊りデイ」の夜勤はできません
特別養護老人ホームやグループホームなど、特定技能の受入れ対象となるサービスでの夜勤は可能です。
一方、デイサービスが介護保険適用外サービスとして実施する、いわゆる「お泊りデイ」の夜勤については、特定技能外国人を従事させることは認められていません。「夜勤ができる=どの施設でも夜間勤務ができる」ではないので、注意しましょう。
04. 清掃はできる?
結論:介護に付随する清掃はできます
「外国人スタッフに利用者さんの部屋を掃除してもらってもいいですか?」——この質問もよくいただきます。
利用者の生活環境を整えるための、次のような業務は、介護に付随する業務として行うことができます。
- 居室・トイレの清掃
- ベッドメイキング/シーツ交換
- 洗濯
- 食事の配膳・下膳
- 物品の整理・補充
特定技能の運用要領が「関連業務」の例として挙げているのは、お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充や管理です。清掃・洗濯・調理については、技能実習「介護」の業務区分で関連業務として位置づけられており、特定技能でも同様に、介護業務に付随する範囲であれば従事できると整理されています。
⚠「一日中清掃だけ」はNGです
注意したいのは、特定技能「介護」で雇用した人を、実質的な清掃スタッフとして働かせることです。
「今日は介護には入らず、一日中施設の掃除をしてください」「外国人スタッフは毎日清掃だけ担当してください」というように、介護業務を行わず関連業務だけに専従させる運用は認められていません。運用要領にも「専ら関連業務に従事することは認められません」と明記されています。
特定技能「介護」の主たる仕事は、あくまで身体介護等の介護業務だからです。
💡 判断の目安
「日本人介護職員も通常行っている仕事か」「介護業務の一環・関連業務として行っているか」という視点で考えると分かりやすいでしょう。
05. デイサービスの送迎はできる?
送迎については、少し注意が必要です。デイサービスでは、日本人の介護職員が利用者の送迎を担当している事業所も多いと思います。
ただし、現在の出入国在留管理庁・厚生労働省の介護分野の説明では、身体介護やレクリエーション、機能訓練の補助、掲示物の管理、物品補充などは具体例として示されている一方、利用者を車で送迎する運転業務については、介護分野の関連業務として明確な具体例には挙げられていません。
そのため、「日本の運転免許を持っているから、特定技能介護でも当然に送迎を任せられる」と単純に判断するのは避けた方が安全です。
■ 在留資格の観点で確認すること
- その事業所で日本人介護職員が通常行っている業務か
- 介護業務に付随する範囲におさまっているか
- 送迎業務が仕事の中心になっていないか
■ 労務・安全管理の観点で確認すること
- 運転免許の要件を満たしているか
- 車両保険の対象になっているか
- 事故時の対応手順を共有できているか
これらを確認したうえで、必要に応じて地方出入国在留管理局等へ確認してから運用することをおすすめします。特に「送迎専門スタッフ」のような働かせ方は、特定技能「介護」の本来の業務から外れる可能性があります。
06. 介護記録や申し送りはできる?
はい、できます。介護では、身体介護だけでなく、食事量の記録、排せつ記録、介護記録、日誌、申し送り、利用者情報の共有なども重要な仕事です。技能実習「介護」の業務区分でも、記録・申し送りは関連業務として示されています。
ただし、外国人スタッフの場合、会話は問題なくても「介護記録を書くのが難しい」「専門用語が分からない」というケースがあります。受入れ当初は、次のような工夫をすると効果的です。
- よく使う介護用語集を作る
- 記録の例文を用意する
- やさしい日本語を使う
- 写真やイラスト入りのマニュアルを作る
こうした工夫は、外国人スタッフだけでなく、日本人の新人スタッフにも分かりやすい職場づくりにつながります。
07. 訪問介護はできる?
以前は、技能実習生や特定技能外国人は訪問介護などの訪問系サービスには従事できませんでした。しかし、制度が変更されています。
💡 2025年4月21日から、一定の条件を満たした特定技能外国人は訪問系サービスに従事できるようになりました。
ただし、誰でもすぐに訪問介護へ行けるわけではありません。原則として、次の要件が必要です。
■ 外国人本人の要件
- 介護職員初任者研修課程等を修了していること
- 介護事業所等での実務経験が原則1年以上あること
■ 受入れ事業所の要件
- 訪問系サービスの基本事項・生活支援技術・緊急時対応などの講習を行うこと
- 一人で適切に行えると認められるまで、サービス提供責任者等が同行してOJTを行うこと
- キャリアアップ計画を作成し、巡回訪問等実施機関へ提出すること
- ハラスメント対策(マニュアル作成・相談窓口の設置等)を行うこと
- 緊急時の連絡体制・ICTを活用した環境整備を行うこと
⚠ 実務で最もつまずくのが「適合確認書」です
受入機関は、特定技能外国人を訪問系サービスへ従事させる前に、介護分野における特定技能協議会から遵守事項等の確認を受け、外国人ごとに「適合確認書」の発行を受ける必要があります。
地方出入国在留管理局への申請時ではなく、巡回訪問等実施機関(JICWELS)での事前確認となる点に注意が必要です。また、実務経験1年は原則であり、日本語能力試験N2相当など一定の条件のもとで、同行訪問の期間を長くすることを前提に例外が認められる場合もあります。
訪問介護の場合は、施設内介護とは違い、外国人スタッフが利用者宅で一人で対応する場面もあります。そのため、通常の施設受入れとは別に要件を確認する必要があります。
08. 働かせられない場所・雇い方
「どんな仕事を任せられるか」と同じくらい大切なのが、そもそも受け入れられる事業所・雇用形態かどうかです。ここを誤ると、業務内容が適切でも制度違反になります。
労働者派遣は認められていません
介護分野の特定技能外国人の雇用形態は、フルタイムでの直接雇用のみです。特定技能外国人を派遣することも、派遣された人を受け入れることもできません。
⚠ 派遣に該当した場合、出入国に関する法令に関し不正または著しく不当な行為を行ったものとして、以後5年間は特定技能外国人の受入れができなくなります。「繁忙期だけ他の系列施設へ」といった運用も、実態によっては問題となり得るため注意が必要です。
サ高住・住宅型有料老人ホームは原則対象外です
2025年4月から訪問系サービスへの従事は可能になりましたが、介護保険法上の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていない有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)では、引き続き特定技能外国人の従事は認められていません。特定施設の指定を受けていても、外部サービス利用型での就労は認められていません。
また、訪問介護事業所に併設している住宅型有料老人ホームやサ高住で、介護保険法に基づかない業務を行わせることもできません。
💡 人数枠にもルールがあります
特定技能外国人の受入れ人数は、事業所単位で、日本人等の常勤の介護職員の総数を超えることができません。この「日本人等」に技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生は含まれない点にご注意ください。
09. まとめ|「介護が中心」が基本ルール
特定技能「介護」というと、「外国人だから補助的な仕事しかお願いできないのでは?」と思われる介護事業者様もいらっしゃいます。
しかし実際には、食事・入浴・排せつなどの身体介護を中心に、夜勤、レクリエーション、記録、申し送りなど、介護現場のさまざまな仕事を担当することができます。
📌 この記事のポイント
特定技能「介護」でできる仕事を判断するとき、まず覚えておきたいのは「身体介護等の介護業務が中心であること」です。
身体介護はもちろん、レクリエーション、機能訓練の補助、介護記録、申し送り、居室清掃や洗濯など、介護に関連する業務も幅広く担当できます。夜勤も、対象となる介護サービスであれば単独夜勤を含めて可能です。
一方で、次の運用には注意が必要です。
- 清掃だけを担当させる/介護と関係のない仕事を中心にする
- お泊りデイの夜勤やサ高住など、対象外のサービスで働かせる
- 派遣の形で受け入れる
また、利用者の送迎運転など制度上の扱いが明確でない業務については、個別に確認してから任せると安心です。
大切なのは「外国人だから仕事を分ける」という考え方ではなく、本人の日本語力・介護経験・習熟度を確認しながら、できる仕事を段階的に増やしていくことではないでしょうか。
📩 特定技能外国人の受入れを検討されている介護事業者様へ
「どの業務をお願いできるのか」
「受入れ前に何を準備すればよいのか」
「外国人スタッフへの説明や生活支援はどうすればよいのか」
といった段階からでも構いません。みらいリンクでは、千葉県を中心に、特定技能外国人の受入れや登録支援機関としての支援についてご相談を承っています。「まだ採用するか決めていない」「少し話を聞いてみたい」という段階でも大丈夫です。
📧 info@ny-partners.jp / 📞 080-2156-4599
厚生労働省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-介護分野の基準について-」
出入国在留管理庁「介護分野」
国際厚生事業団(JICWELS)「外国人介護人材支援」FAQ/適合確認申請に関するよくあるご質問
厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」
※制度・運用は変更される場合があります。実際の受入れや業務内容については、最新の法令・行政機関の情報をご確認ください。
建設業のバックオフィスに12年、外国人材の支援に8年携わってきました。千葉県で登録支援機関「みらいリンク」を運営しています(登録支援機関 26登-013598)。制度の説明だけでなく、現場で実際に運用できる形でのご提案を心がけています。

