外国人の施工管理人材を採用しようとするとき、こんなふうに迷う建設会社も多いのではないでしょうか。
「海外の建築系大学を卒業した人なら、施工管理として採用できる?」
「土木工学ではなく機械工学でも大丈夫?」
「大学を出ていない外国人は施工管理として採用できない?」
外国人施工管理の採用を検討するとき、まず迷いやすいのが「どんな経歴の人なら採用対象になるのか」という点です。
外国人が日本の建設会社で施工管理などの技術職として働く場合、一般的に検討される在留資格が「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる技人国(ぎじんこく)です。
技人国では、「外国人であること」や「日本語が話せること」だけではなく、次のような点が重要になります。
- どの学校を卒業したか
- 何を専攻してきたか
- どのような実務経験があるか
- 日本でどのような仕事をするか
この記事では、外国人施工管理を採用する企業向けに、技人国の学歴・専攻・実務経験の要件と、候補者を見るときのポイントを分かりやすく整理します。
01. 外国人施工管理には主に3つのルートがある
施工管理など、自然科学分野の専門知識を使う仕事で技人国を検討する場合、本人側の経歴は大きく次の3つに分けて考えると分かりやすくなります。
| 主なルート | 確認する内容 |
|---|---|
| 大学等卒業 | 施工管理業務に関連する科目を専攻して大学等を卒業 |
| 日本の専門学校卒 | 関連する専門課程を修了し、専門士等の要件を満たしている |
| 実務経験 | 原則10年以上の関連する実務経験がある |
※ 出入国在留管理庁の公表資料をもとに整理。
出入国在留管理庁では、技術・人文知識分野について、関連する科目を専攻して大学を卒業または同等以上の教育を受けていること、日本の専修学校の一定の専門課程を修了していること、または原則10年以上の実務経験などを基準としています。
では、施工管理を採用する場合にどのように考えればよいのか、順番に見ていきましょう。
02. 建築・土木系の大学卒は最も分かりやすい
外国人施工管理の採用で、まず検討しやすいのが建築・土木などを大学で学んだ人材です。例えば、次のような専攻が考えられます。
- 建築学、建築工学
- 土木工学、建設工学
- 社会基盤工学、都市工学、構造工学
- 電気工学、機械工学、環境工学
重要なのは、「大卒」という肩書だけではありません。大学で学んだ内容と、日本で担当する施工管理業務との間につながりがあるかを見る必要があります。
| 大学での専攻 | 想定される施工管理業務 |
|---|---|
| 建築工学 | 建築施工管理 |
| 土木工学 | 土木施工管理 |
| 電気工学 | 電気設備施工管理 |
| 機械工学 | 空調・衛生設備などの施工管理 |
このような組み合わせであれば、専攻と仕事内容の関係を比較的説明しやすいでしょう。
03. 専攻と仕事は完全一致でなければダメ?
必ずしも、学科名と職種名が完全に一致している必要はありません。
出入国在留管理庁は、大学卒業者について、大学の専攻科目と実際の業務との関連性を比較的柔軟に判断するとしています。この考え方は海外の大学についても準じて判断するとされています。
例えば、「Civil Engineering(土木工学)を専攻しているから、道路工事しかできない」というような狭い見方ではありません。大学で次のような科目を学び、その知識を建設会社の施工管理業務で使うのであれば、履修内容全体から関連性を説明できる場合があります。
- 構造、材料
- 測量、施工
- 建設マネジメント、プロジェクト管理
- CAD
💡 ポイント
採用するときは学部名だけで判断しないこと。学部名ではなく履修科目まで見ると、その人が施工管理として活躍できるかどうかが見えてきます。
04. 「工学部卒」なら施工管理として採用できる?
ここも企業が迷いやすいところです。履歴書に「Faculty of Engineering」「Bachelor of Engineering」と書いてあるだけでは、施工管理に適しているかは判断できません。
工学部といっても、建築、土木、電気、機械、情報、化学など、さまざまな分野があります。
例えば、情報工学だけを専攻していた人を建築施工管理として採用する場合には、本人が学んだ専門知識と仕事内容との関連性が分かりにくくなる可能性があります。一方、機械工学を学んだ人を機械設備・空調設備の施工管理として採用するなど、本人の専門分野を活かせる配属を考えることもできます。
「この人をうちのどこに当てはめるか」ではなく、
「この人が学んできたことを、うちのどの仕事で活かせるか」という視点で見ると分かりやすくなります。
05. 海外の大学卒でも技人国の対象になる?
海外の大学を卒業している人も対象となります。出入国在留管理庁のQ&Aでも、海外の大学を卒業している場合について学歴要件を満たすことが示されています。
そのため、「日本の大学を出ていないからダメ」ということではありません。ベトナム、インドネシア、フィリピン、ネパールなど海外の大学で建築・土木等を学んだ人材を、日本企業が施工管理候補として採用することも考えられます。
国土交通省も外国人建設技術者の採用を中堅・中小建設企業の人材確保策の一つとして位置付け、海外の建築・土木系大学の学生・卒業生と日本企業をつなぐ取組を行っています。
06. 海外大学卒を見るときは「Bachelor」だけで判断しない
海外人材の履歴書を見ると、Bachelor、Diploma、S1、D4、Polytechnic、College など、日本ではなじみの薄い表記が出てくることがあります。
ここで注意したいのは、名称だけで日本の「大学」「専門学校」に当てはめないことです。国によって教育制度が異なるため、「Bachelorと書いてあるから必ずOK」「Diplomaだから大学ではない」と単純に判断することはできません。
海外学歴で確認しておきたい項目
- 学校名/学校の種類
- 修業年数
- 取得した学位・資格
- 専攻/卒業年月
- 履修科目
特に、日本ではなじみのない学位や学校の場合には、在留資格申請前にその教育課程がどのように扱われるか確認した方がよいでしょう。
07. 卒業証明書だけでなく「成績証明書」も確認したい
外国人施工管理を採用するとき、みらいリンクでは卒業証明書だけでなく成績証明書まで確認することをおすすめしています。理由は、学校名や学部名だけでは、実際に何を学んだのか分からないことがあるからです。
例えば履修科目に、次のような科目が含まれていれば、本人がどのような専門知識を身につけてきたのかを把握しやすくなります。
- Construction Management(施工管理)
- Structural Engineering(構造工学)/Civil Engineering(土木工学)
- Building Materials(建築材料)/Surveying(測量)
- Architecture(建築)/Project Management(プロジェクト管理)
- CAD/Quantity Surveying(積算)
これは在留資格の確認だけでなく、企業がどの部署・どの施工管理職に配属するかを考える材料にもなります。
「大学を出ています」だけで採用を進めるのではなく、「大学で何を学んできましたか?」まで見ることが大切です。
08. 日本の専門学校卒でも施工管理として採用できる?
日本の専修学校の専門課程を修了した外国人についても、一定の要件を満たせば技人国で働くことができます。代表的なのが、「専門士」など所定の要件を満たしているケースです。例えば、建築科、建築設計科、土木工学科、電気工学科、設備系学科などを修了し、その専門知識を使う仕事に就く場合です。
ただし、ここには大学卒業者との違いがあります。
出入国在留管理庁は、大学卒業者の場合は専攻と仕事との関連性を比較的柔軟に判断する一方、専修学校については原則として「相当程度の関連性」が必要としています。
例えば、日本の専門学校で建築を専門的に学んだ人が建築施工管理を担当するのであれば分かりやすいですが、専攻とまったく異なる分野の仕事を担当させる場合には注意が必要です。
なお、文部科学大臣の認定を受けた「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の対象課程など、一部については関連性をより柔軟に判断する運用も設けられています。
09. 海外の専門学校卒はどう考える?
ここは、日本の専門学校と区別して考える必要があります。日本の「専門士」という称号を使ったルートは、日本の専修学校の所定の専門課程を修了した人を対象とする制度です。
そのため、「母国の専門学校を卒業しているから、日本の専門士と同じ」とは判断できません。
ただし、海外の教育機関について、実際には大学と同等以上の教育課程に該当する場合なども考えられるため、「専門学校という名称だから必ず対象外」と一律に決めるのも適切ではありません。
海外のCollege、Polytechnic、Diploma等については、
- その国での教育上の位置付け
- 修業年数
- 学位・資格
- 履修内容
などを確認し、大学または同等以上の教育として扱えるのか、それとも実務経験で要件を見る必要があるのかを個別に確認することが重要です。
10. 大学を卒業していなくても施工管理として採用できる?
大学等の学歴要件を満たしていない場合でも、原則として10年以上の関連する実務経験があれば、技人国の要件を満たす可能性があります。例えば、「母国で長年、建設会社の施工管理・現場監督として働いてきた」という人です。
また、この10年については、大学・高等専門学校・高校・専修学校などで関連する科目を学んだ期間を含められる場合があります。
💡 結論
高卒だから施工管理として絶対に採用できない、というわけではありません。ただし、実務経験ルートの場合は、その経験を客観的に証明する必要があります。
11. 「10年経験があります」だけでは足りない
実務経験で技人国を検討する場合には、次の点が重要になります。
- どの会社で
- いつからいつまで
- どんな職種で
- どんな仕事をしていたか
出入国在留管理庁の申請資料でも、関連する業務に従事した期間を証明する在職証明書等が求められています。したがって、候補者本人が「建設会社で10年以上働いていました」と言っているだけではなく、以前の勤務先から在職証明書などを取得できるか確認しておいた方がよいでしょう。
特に海外企業の場合、会社がすでに廃業している、証明書が取れない、といったケースもあります。採用が決まってから慌てないよう、面接段階で実務経験を証明できるかまで確認することがポイントです。
12. 施工管理技士の資格を持っていないと採用できない?
外国人を技人国で施工管理人材として採用するための学歴・実務経験の基準に、「施工管理技士を取得していること」が一律の条件として定められているわけではありません。
そのため、海外の建築・土木系大学を卒業した新卒者を採用し、日本で施工管理経験を積んでもらうことも考えられます。実際、国土交通省も中堅・中小建設企業による外国人建設技術者の採用・育成を支援しています。
ただし、将来的に主任技術者・監理技術者など一定の役割を担わせる場合には、建設業法上の資格・実務経験要件など別の制度も関係してきます。
「日本で働くための在留資格」と「建設業法上必要になる資格」は別の話として考えましょう。
13. 本人の学歴だけでなく「会社で何をさせるか」も重要
ここまで本人の学歴・専攻について説明してきましたが、もう一つ重要なのが入社後の仕事内容です。
例えば建築工学を学んだ人でも、入社後に実際に行う仕事が、資材運搬、清掃、型枠作業、鉄筋作業、その他の現場作業ばかりであれば、「建築を学んでいるから技人国」ということにはなりません。
技人国は、専門的な技術・知識を使う業務に従事するための在留資格です。つまり、「誰を採用するか」と「何をしてもらうか」はセットで考える必要があります。
📎 施工管理として技人国で任せられる業務と、現場作業との線引きについては、技人国とは?任せられる仕事の線引きで詳しく解説しています。
14. 日本語力は別の記事で確認
もう一つ、外国人施工管理の採用で重要なのが日本語力です。ただし、技人国の学歴・実務経験要件と、施工管理として実際に必要な日本語力は分けて考えた方が分かりやすくなります。
- 「N2が必要なのか?」
- 「N3でも施工管理として採用できるのか?」
- 「面接では何を確認すればいいのか?」
📎 これらについては、外国人施工管理に必要な日本語力は?N2が必要?採用時に見るべきポイントを解説で詳しく解説しています。
15. 候補者を見るときの確認ポイント
外国人施工管理の採用を検討するときは、まず次の項目を確認してみてください。
■ 学歴
- 最終学歴は大学・専門学校・高校のどれか
- 海外の学校の場合、その教育上の位置付けは確認できるか
- 卒業証明書を提出できるか
■ 専攻
- 建築・土木・電気・機械など、何を専攻したか
- 施工管理業務とのつながりを説明できるか
- 成績証明書・履修科目を確認できるか
■ 実務経験
- 建設関連の実務経験は何年あるか
- 具体的にどんな仕事をしていたか
- 在職証明書などで経験を証明できるか
■ 採用後の仕事
- 建築施工管理なのか、土木施工管理なのか、設備施工管理なのか
- 本人の専攻を活かせる仕事になっているか
- 専門的な施工管理業務を継続して任せられるか
採用前にこのあたりを整理しておくだけでも、人材紹介会社や行政書士などとのやり取りがスムーズになります。
📌 「大卒かどうか」ではなく、学んだことと仕事をつなげて見る
外国人施工管理の採用では、「大学を卒業しているから採用できる」あるいは「大学を卒業していないから採用できない」と単純に判断することはできません。重要なのは、学歴・専攻・実務経験・実際の仕事内容をつなげて見ることです。
- 建築系大学卒 → 建築施工管理
- 土木系大学卒 → 土木施工管理
- 電気系大学卒 → 電気設備施工管理
- 機械系大学卒 → 機械・設備施工管理
- 学歴要件を満たさない → 10年以上の関連実務経験を確認
海外には、日本で働くことを希望している建築・土木系の大学卒業者もいます。一方、日本の建設会社側では、「海外の学歴の見方が分からない」「この専攻で施工管理として採用できるのか判断できない」ということも少なくありません。
外国人施工管理の採用では、求人を出してから考えるのではなく、どの専攻・経験の人を、どの施工管理業務で採用したいのかを最初に整理しておくことが大切です。
📩 まずはお気軽にご相談ください
「建築・土木系の外国人材を採用してみたい」
「海外大学の学歴をどう見ればいいか分からない」
「施工管理としてどんな人材を募集すればいい?」
といった段階でも、お気軽にご相談ください。採用した後に「専攻と仕事内容が合わなかった」とならないよう、採用条件を最初に整理するところからお手伝いします。
📧 info@ny-partners.jp / 📞 080-2156-4599
※在留資格の許可・不許可は、本人の学歴、履修内容、職歴、企業で担当する具体的な職務内容等をもとに個別に審査されます。本記事は一般的な制度の説明であり、個別の在留資格取得を保証するものではありません。具体的な在留資格申請については出入国在留管理庁または申請取次資格を持つ行政書士等の専門家へご確認ください。
【参考資料】
出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」
出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」
出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」
国土交通省「外国人建設技術者の採用・定着に向けたハンドブック 第2版(2026年3月)」
✍ 著者:みらいリンク
建設業のバックオフィスに12年、外国人材の支援に8年携わってきました。千葉県で登録支援機関「みらいリンク」を運営しています。制度の話を、現場の目線でわかりやすくお伝えします。


