「特定技能」という言葉は知っているけれど、実際に外国人を採用するとなると、何から始めたらいいのかわからない――そんな経営者・管理部門の担当者の方は多いのではないでしょうか。
特定技能制度は、深刻な人手不足が続く産業分野において、一定の技能・日本語能力を持つ外国人が即戦力として働くことができる在留資格です。2019年に創設され、建設・製造・外食・介護など12分野で活用されています。
本記事では、特定技能外国人を初めて受け入れようとする企業が知っておくべき「受け入れ要件」と「事前準備のステップ」を、制度の基本からわかりやすく解説します。
1 特定技能制度の基本をおさらい
■ 2種類の特定技能(1号・2号)
- 技能水準試験+日本語試験の合格が必要
- 在留期間は通算最長5年
- 家族帯同は認められていない
- 現在、多くの企業が活用
- より高度な試験合格+班長としての実務経験が必要
- 在留期間の更新回数に制限なし
- 要件を満たせば家族帯同も可(配偶者・子)
技能実習2号または3号を良好に修了した外国人は、試験免除で特定技能1号に移行できる仕組みがあります。
■ 建設分野の業務区分(3つに統合)
建設分野で特定技能外国人が従事できる業務は、令和4年8月の閣議決定により、以下の3つの業務区分に整理・統合されています。
🏠 建築
⚡ ライフライン・設備
- 土木:土木施設の新設・改築・維持・修繕に係る作業等(コンクリート圧送、とび、建設機械施工、塗装 等)
- 建築:建築物の新築・増築・改築・移転・修繕・模様替に係る作業等(大工、鉄筋施工、左官、内装仕上げ、塗装 等)
- ライフライン・設備:電気通信・ガス・水道・電気等の整備・設置・変更・修理(配管、保温保冷、電気工事 等)
業務区分は「従事する業務内容」に基づく区分です。作業を行う現場の種別(土木現場か建築現場か)を問わず、区分に適合する業務内容であればどの現場でも従事可能です。
■ 登録支援機関とは
特定技能外国人を受け入れる企業は、外国人が日本で安定して生活・就労できるよう「支援計画」を作成し、実施する義務があります。この支援業務を企業に代わって担うのが登録支援機関です。
支援業務の外部委託は任意ですが、中小企業・初めての受け入れ企業にとっては、登録支援機関の活用が実務上ほぼ必須といえます。
登録支援機関は「支援計画の実施」を代行できますが、外国人の職業紹介を行うには、別途「有料職業紹介事業の許可」が必要です(厚生労働省)。
2 受け入れ企業が満たすべき要件
特定技能外国人を雇用するためには、受け入れ企業側にも一定の要件があります。これらを満たさない場合、入管への申請が受理されないため、事前の確認が欠かせません。
欠格事由に該当しないこと
- 過去5年以内に出入国・労働法令違反があること
- 役員等が禁錮以上の刑に処せられて5年を経過していないこと
- 1年以内に非自発的離職者(解雇等)を出していること
- 行方不明者を発生させていること
- 労働保険・社会保険の適正な加入がされていないこと
社会保険・労働保険の加入状況は申請書類でも確認されます。未加入や滞納がある場合は、先に解消しておく必要があります。
同等報酬要件(月給制での支払いが必須)
特定技能外国人に対して、同じ業務に従事する日本人従業員と「同等以上の報酬」を支払うことが義務付けられています。建設分野ではさらに月給制での支払いが求められます(日給制・時給制は不可)。
また、技能実習2号修了者は「概ね3年の経験者」、技能実習3号修了者は「概ね5年の経験者」として処遇する必要があり、国土交通省の審査で確認されます。
会社都合・天候による現場中止等の休業は「欠勤扱い」にできません。使用者の責に帰すべき事由による休業は、労働基準法に基づき平均賃金の60%以上の支払いが必要です。
支援計画の作成・実施義務(10項目)
受け入れ企業は「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、適正に実施しなければなりません。義務とされる支援内容は以下の10項目です。
- 事前ガイダンスの提供(在留資格・業務内容・報酬等の説明)
- 出入国時の送迎
- 住宅確保の支援
- 生活オリエンテーション(銀行口座開設・医療機関案内等)
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情対応
- 日本人との交流促進
- 非自発的離職時の転職支援
- 定期的な面談・行政機関への通報
多言語対応ができる担当者が社内にいない場合は、登録支援機関への委託で要件をクリアできます。
建設分野に固有の追加要件(特に重要)
建設分野では、一般の特定技能要件に加え、国土交通省が定める独自の条件が課されます。
- 建設業法第3条第1項の建設業許可を受けていること
- 【CCUS登録】受け入れ企業の「事業者登録」を受入計画申請前に完了させ、事業者IDを取得しておくこと(本人の技能者登録は入国後1か月以内でよいが混同しないよう注意)
- 【JAC加入】国土交通大臣登録の「特定技能外国人受入事業実施法人」(JACなど)に直接または間接的に所属し、行動規範を遵守すること
- 「建設特定技能受入計画」の認定を国土交通大臣から受けること(オンライン申請が原則)
- 受け入れる特定技能1号外国人の数が常勤職員の総数を超えないこと
- 直接雇用に限る(派遣は不可)
- 入国後おおむね3〜6か月以内に、FITSが実施する「受入れ後講習(スタートアップセミナー)」を受講させること
- 国土交通省またはFITSによる年1回以上の巡回訪問への協力
「建設特定技能受入計画」は、国土交通省への申請後、認定前でも入管への在留資格申請は並行して進めることが可能です。認定証の写しは在留資格の許可を受ける段階で必要になります。
建設業法違反による監督処分(申請日前5年以内)がある場合は、受入計画の認定が受けられません。
3 受け入れまでの事前準備ステップと所要期間
要件を確認したら、次は具体的な準備に入ります。初めて特定技能外国人を受け入れる建設企業が取り組むべき主なステップと所要期間の目安を整理しました。
審査着手まで1〜2か月、その後の審査に3か月超という状況が関東地方整備局等で続いています。「そろそろ採用しようか」と思った時点ではすでに遅い可能性があります。検討を始めた段階で、まず相談・準備に着手してください。
| ステップ | 主な内容 | 所要期間の目安 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 社内体制整備・要件確認 | 2〜4週間 |
| STEP 2 | JAC加入・CCUS事業者登録 | 1〜2か月 |
| STEP 3 | 登録支援機関の選定・契約 | STEP 1〜2と並行して実施 |
| STEP 4 | 外国人の選定・重要事項説明・雇用契約締結 | 1〜2か月(人材確保の状況による) |
| STEP 5 | 建設特定技能受入計画の申請・認定(国土交通省) | 3〜4か月以上 ※補正なしの場合。関東等はさらに延びることあり |
| STEP 6 | 在留資格申請(入管)・就労開始 | 1〜3か月(STEP 5と並行申請可) |
| 合計 | 受け入れ決定〜就労開始まで | 最低6か月〜 初回・補正あり・関東圏は8か月以上を見込むこと |
社内体制の整備(受け入れ決定後すぐ /目安:2〜4週間)
まず受け入れに向けた社内の担当者・窓口を決めましょう。外国人の入社後には、日常的なコミュニケーションや各種手続きが発生します。就業規則・賃金規程が整備されているか(常時10人以上の場合は必須)、社会保険・雇用保険の加入状況に問題がないかを事前にチェックしておきましょう。
JACへの加入・CCUSの事業者登録(目安:1〜2か月)★STEP 5の前に必須
【CCUSの事業者登録】建設キャリアアップシステム(CCUS)への「事業者登録」を完了し、「事業者ID」を取得しておきます。この事業者IDは受入計画の申請書に記載する必須項目であり、登録が済んでいなければ申請できません。
【JACへの加入】JACの正会員である建設業者団体に所属しているか確認し、所属がなければJACに直接「賛助会員」として加入します。所属団体経由での間接加入ができるか事前に確認しましょう。
登録支援機関の選定・契約(STEP 1〜2と並行して実施)
価格・実績・対応言語(ベトナム語・インドネシア語等)・業種知識などを比較して選びましょう。建設業の実情に詳しい機関を選ぶと心強いです。
居室の広さが1人あたり7.5㎡以上(浴室・トイレ・ロフトを除く居室面積)という基準を満たす必要があります。社宅・寮を使う場合は事前に面積を確認しておきましょう。
①企業が借り上げて提供する場合:敷金・礼金・保証料はすべて企業負担(毎月の家賃は本人から実費徴収可)。②外国人本人が契約する場合:敷金・礼金は原則として本人負担です。いずれの場合も、近隣相場を大幅に超える家賃設定は避けてください。
外国人の選定・重要事項説明・雇用契約締結(目安:1〜2か月)
受け入れる外国人が特定技能1号の要件を満たしているか確認します。①技能評価試験(または技能実習2号修了)、②日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上)の合格証明書を確認してください。
雇用条件の重要事項説明は、「当該外国人が十分に理解できる言語」で書面を交付して行います(国土交通省告示様式第2)。申請日および雇用開始予定日前概ね6か月以内に行う必要があります。
建設特定技能受入計画の申請・認定(目安:3〜4か月以上)
「外国人就労管理システム」(オンライン)を通じて申請します。主な提出書類には、建設特定技能受入計画書・建設業許可証明書・CCUS事業者ID証明書・JAC加入証明書・ハローワーク求人票・日本人の賃金台帳・雇用契約書などが含まれます。
申請は雇用開始予定日の6か月前から可能です。関東地方整備局など申請が集中する地域では、補正がない場合でも認定まで3〜3か月半程度かかることが公式に案内されています。
在留資格申請・認定〜就労開始(目安:1〜3か月)
建設特定技能受入計画の認定申請後、認定を待たずに入管への在留資格申請を並行して進めることが可能です。ただし、在留資格の許可を受けるためには認定証の写しが必要です。在留資格の認定証明書が交付されてから外国人が入国・就労開始となります。
4 受け入れ後に必要な対応
在留資格が付与されたら、あとは終わり――ではありません。受け入れ後も継続的な対応が求められます。
- 入国後速やかに(原則1か月以内):外国人をCCUSの技能者として登録し、国土交通省に登録完了を届け出る
- 入国後おおむね3〜6か月以内:FITSが実施する「受入れ後講習(特定技能スタートアップセミナー)」を受講させる
- 受入れ開始後1か月以内:国土交通省(外国人就労管理システム)に受入報告を行う
- 定期的(少なくとも年1回):FITSによる巡回訪問への協力(義務)
- 定期面談の実施(登録支援機関が代行可)および入管への定期報告
- 退職・離職・失踪等が発生した場合:速やかに国土交通省へ退職報告、入管へも届出
- 雇用条件の変更や計画内容の変更時:国土交通省への変更申請または届出が必要
特定技能外国人が退職し、同じ会社に再雇用する場合も、新たに建設特定技能受入計画の認定申請が必要です。既存の計画は自動的には引き継がれません。
5 まとめ:まず「要件確認」から始めよう
- 「うちの会社は受け入れ要件を満たしているか」を早い段階で確認すること
- 社会保険の未加入・労働法令違反・建設業許可の有無などがある場合は先に解消することが先決
- 建設分野ではJAC加入・CCUS登録・受入計画認定など入管申請前に整えるべき手続きが多い
- 受入計画の審査は書類補正なしでも3か月以上、関東など申請集中地域はさらに長くなる
- 受け入れ決定から就労開始まで最低6か月、初回・書類修正発生時は8か月以上
- 「半年後には採用したい」と思ったら、今すぐ動き始めることが必要
特定技能外国人の受け入れは、制度の理解と事前準備が成功の鍵です。手続きは複雑に見えますが、ひとつひとつのステップを踏めば中小企業でも十分に対応できます。初めての受け入れで不安を感じる方は、ぜひ登録支援機関にご相談ください。
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