外国人を採用したいという建設会社の社長さんから、いちばん多く受ける質問がこれです。
「大学を出た優秀な子がいるらしいけど、うちで働かせられるの?」
答えは「仕事の中身による」です。同じ会社の同じ現場でも、任せる業務によって異なります。ここを曖昧なまま採用してしまうと、更新のときに不許可になったり、最悪の場合は会社が罰せられたりします。
この記事では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(略して技人国/ぎじんこく)で建設会社が任せられる仕事と、任せられない仕事の線引きを、出入国在留管理庁が公表している許可・不許可事例に沿って整理します。
- 技人国で建設会社が任せられる仕事・任せられない仕事の具体例
- 「現場に行く」と「現場作業に入る」の決定的な違い
- 入社当初の実務研修が認められる3つの条件
- 不許可になりやすい5つのパターン
- 2027年4月からの不法就労助長罪の厳罰化
- 技人国と特定技能1号(建設)の使い分け
📑 目次
1. そもそも技人国とはどんな在留資格か
技人国は、大学などで学んだ専門知識を活かす仕事に就くための在留資格です。3つの分野からできています。
| 分野 | 建設業でのイメージ |
|---|---|
| 技術 | 土木・建築・機械・電気などの工学系の知識を使う仕事(設計、施工管理、測量、CAD) |
| 人文知識 | 法律・経済・経営などの知識を使う仕事(総務、経理、人事) |
| 国際業務 | 語学力を使う仕事(翻訳・通訳、海外取引) |
本人側の主な条件
- 学歴:大学・大学院を卒業していること。または日本の専門学校(専修学校専門課程)を卒業して「専門士」の称号を持っていること
- ※「専門士」は日本国内の専修学校専門課程の修了者を対象とする制度です。海外の専門学校卒というだけでは、この「専門士」ルートには該当しません。ただし、海外の教育機関であっても、その課程が「大学卒業と同等以上の教育」に当たるかどうかは個別に確認されます。学校名だけで判断せず、教育課程・修業年数・取得学位などを確認することが大切です。
- 実務経験(学歴がない場合):技術・人文知識の分野で10年以上、国際業務の分野で3年以上
- 専攻と仕事の関連性:学校で学んだ内容と、これからやる仕事がつながっていること
会社側の主な条件
- 報酬が日本人と同等額以上であること
- 事業に継続性・安定性があること
- 業務量が十分にあること
2. 建設業で「OK」な仕事
出入国在留管理庁が公表している許可事例から、建設関連のものを挙げます。
- 建築工学を専攻して大学を卒業した人が、建設会社で建設技術の研究や建設事情の調査に従事する(月額約40万円)
- 社会基盤工学を専攻した人が、土木・建設コンサルタント会社で研究開発・解析・構造設計に従事する(月額約30万円)
- 専門学校の建築室内設計科を卒業した人が、建築設計・設計監理・積算を行う会社で建築積算に従事する
- 専門学校の電気工学科を卒業した人が、電気通信設備工事などの設計・施工を行う会社で、工事施工図の作成、現場職人の指揮・監督に従事する
整理すると、建設業で技人国として認められやすいのは次のような職種です。
- 施工管理(工程管理・品質管理・安全管理・原価管理)
- 設計(意匠・構造・設備)
- CADオペレーター、施工図作成
- 測量、設計積算
- 翻訳・通訳、外国人社員の教育・労務管理(十分な業務量がある場合)
- 総務・経理・人事などの管理部門
注目してほしいのは4つめの事例です。「現場職人の指揮・監督」は許可されています。つまり、技人国の人が現場に行くこと自体は問題ありません。よくある「技人国は現場に入っちゃダメ」という理解は、正確ではないのです。
3. 建設業で「NG」な仕事
一方で、次のような業務は技人国では認められません。
- 型枠、鉄筋、とび、内装、解体などの職人としての作業
- 資材の運搬、片付け、清掃
- 重機のオペレーター(※運転そのものを主たる業務とする場合)
- 交通誘導・警備
- 反復訓練によって身につく作業全般
公表されている不許可事例を見ると、判断の基準がよく分かります。
- 弁当工場で箱詰め作業に従事するとして申請 → 人文科学の知識を必要とする業務とは認められず不許可
- バイクのフレーム修理やタイヤ交換に従事するとして申請 → 専門的な知識を必要とする業務とは認められず不許可
- 電気部品工場で部品の加工・組立・検査・梱包に従事するとして申請 → その工場にいる技能実習生とほとんど同じ業務だったため不許可
3つめは建設業でもそのまま当てはまります。同じ会社に技能実習生や特定技能の人がいて、技人国の人がその人たちと同じ作業をしている——これは不許可の典型パターンです。
現場に「行く」のはOK。現場作業に「入る」のはNG。
図面を持って現場に行き、写真を撮り、出来形を確認し、職人さんに指示を出す。これは施工管理の仕事です。
そこで自分もスコップを持ち、資材を運び、型枠を組む。ここから先は技人国の範囲外です。
4. 「最初の1年は現場を経験させたい」は通るのか
建設会社からよく出る質問です。日本人の新入社員だって、いきなり現場代理人はできません。まず現場を覚えてもらう——これは合理的な考え方です。
入管も、この点については実務研修という枠組みで例外を認めています。公表されている考え方は次のとおりです。
認められる条件
- 日本人の大卒社員に対しても同じ研修が行われていること(外国人だけの研修はNG)
- 技人国として在留する期間全体のなかで、研修が大半を占めないこと
- 研修後に技人国に該当する業務へ移行することが、キャリアステッププランで明確に示されていること
注意すべき点
- 採用から1年を超える研修を予定する場合は、研修計画の提出を求められ、その合理性が審査されます
- 実務研修がある場合、在留期間は原則として「1年」が決定されます(更新時に、ちゃんと専門業務に移行したかを確認されるため)
- 更新時に、当初の予定を超えてまだ研修中だと、合理的な理由がなければ更新が認められません
実際に、「入社当初1年は研修としてレストランの配膳や客室清掃にも従事する」として申請したホテルの事例で、過去に同じ理由で採用した外国人が研修予定を大幅に超えて同じ業務を続けていたことが判明し、不許可になったケースがあります。
また、「数年間、期間未確定で店舗実務を経験させ、選抜された人だけが本社の管理業務に移る」というキャリアプランも、全員に一律に課される研修ではないとして不許可になっています。「見込みがあれば施工管理に上げる」という曖昧な約束では通らない、ということです。
つまり、研修は「あり」。ただし、日本人と同じ内容で、期間を区切って、書面で示すこと。この3つが揃っていない研修は、単なる現場作業とみなされます。
5. 不許可になりやすい5つのパターン
これまで見てきた事例をまとめると、建設業で技人国が不許可になりやすいのは次のパターンです。
- 報酬が日本人より低い — 同じ仕事をする日本人社員の給与と比較されます
- 技能実習生・特定技能の人と同じ作業をしている — 「専門職として採用した」という説明が崩れます
- 専攻と業務の関連性が説明できない — 文系学部卒でいきなり施工管理、などは丁寧な説明が必要です
- 研修の名目が長すぎる/曖昧 — 期間未確定、日本人には課されない研修はNG
- 常駐先での指揮命令があいまい — 元請の現場に常駐する場合、日々の指示や勤怠管理を元請が行っていると、労働者派遣とみなされて該当性が否定されるおそれがあります
5番目は建設業特有の論点です。常駐そのものが禁止されているわけではありませんが、請負の実体(成果責任・体制・指揮命令の独立性)を客観的な資料で説明できる形にしておく必要があります。
6. 「バレなければいい」が通用しなくなります
もし技人国の人に現場作業をさせていた場合、本人が退去強制の対象になるだけでなく、会社も「不法就労助長罪」に問われます。
そして2024年6月に公布された改正入管法により、この罰則の引き上げが予定されています(2027年4月1日施行予定)。
| 現行 | 改正後(予定) | |
|---|---|---|
| 罰則 | 3年以下の拘禁刑/300万円以下の罰金 | 5年以下の拘禁刑/500万円以下の罰金(併科あり) |
上限の引き上げには、実務上の大きな意味があります。執行猶予を付けられるのは、言い渡された刑が3年以下の場合に限られます。現行法では法定刑の上限が3年のため、重く量刑されても執行猶予の余地が残りますが、上限が5年になると、悪質な事案では3年を超える判決、すなわち執行猶予の付かない実刑が言い渡される可能性が出てきます。加えて両罰規定により、法人にも罰金が科されます。
さらに、「知らなかった」では免責されません。在留カードの確認を怠ったなどの過失があれば処罰の対象になります。
建設業は元請・下請の重層構造があるため、下請が雇っている外国人の在留資格まで元請が確認を求められる場面も増えています。CCUSの技能者登録でも在留資格の情報を登録しますから、実態と登録内容の食い違いは表に出やすくなっています。
7. 「現場作業をしてほしい」なら特定技能を
ここまで読んで、「うちが欲しいのは施工管理じゃなくて、現場で動ける人なんだけど」と思われた方も多いと思います。その場合の答えは特定技能です。
| 技人国 | 特定技能1号(建設) | |
|---|---|---|
| 現場作業 | できない | できる |
| 施工管理の補助 | 中心業務 | 付随的にはできる |
| 学歴要件 | 大卒または専門士 | 不要(技能試験+日本語試験) |
| 在留期間 | 更新に上限なし | 通算5年(2号に移行すれば上限なし) |
| 家族帯同 | できる | できない(2号は可) |
| 受入側の義務 | 特になし | 支援計画の実施、JAC加入、CCUS登録など |
現場作業や分野の実務作業を行うのは特定技能、施工管理やエンジニア、設計などを行うのは技人国。まずはこの整理で考えていただくと、間違いが少なくなります。
そして、両方を組み合わせる会社も増えています。現場は特定技能の人が担い、その人たちをまとめる立場に技人国の施工管理者を置く。同じ国の出身者どうしで言葉が通じるので、現場のコミュニケーションが一気に楽になった、という声もよく聞きます。
8. まとめ
- 技人国で任せられるのは、施工管理・設計・CAD・測量・積算・翻訳通訳・管理部門
- 任せられないのは、職人としての作業、運搬、片付け、警備などの現業
- 現場に行くことは問題ない。現場「作業」に入ることが問題
- 入社当初の実務研修は認められるが、日本人と同内容・期間を区切る・書面で示すの3点セットが必要
- 報酬は日本人と同等額以上が絶対条件
- 2027年4月から不法就労助長罪の厳罰化が予定されています。「知らなかった」は通りません
採用の前に、一度ご相談ください
みらいリンクでは、建設業のバックオフィス実務を12年、外国人支援を8年経験したスタッフが、「その仕事、その在留資格で本当に大丈夫か」というところから一緒に整理します。
- 任せたい業務を伺って、技人国・特定技能のどちらが適切かを判断します
- 職務内容説明書やキャリアステッププランの作り方をお伝えします
- CCUS登録、JAC加入、就労管理システムの操作までサポートします
- 在留資格の申請手続きは、提携行政書士と連携してワンストップでご案内します
「採用してから間違いに気づく」のがいちばんリスクが高いです。求人を出す前の段階で構いませんので、お気軽にお声がけください。
TEL:080-2156-4599
Mail:info@ny-partners.jp
※本記事は2026年8月時点の情報をもとに、出入国在留管理庁「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」などの公表資料を参照して作成しています。個別の案件の可否は業務内容や本人の経歴によって判断が分かれます。実際の申請にあたっては最新の情報をご確認ください。


