「若い子が入ってこないから、特定技能で考えたいんだけど」
建設会社の社長さんから、いちばん多く受けるご相談です。ただ、建設分野の特定技能は他の業種より手続きが複雑です。入管のルールに加えて、国土交通省のルールが上乗せされているためです。
「来月から来てもらう」というスケジュールは、まず組めません。そして手続き以上に見落とされやすいのが、受け入れたあとに残る宿題です。
この記事では、建設業で特定技能1号を受け入れる会社が押さえておくべき注意点を、5つに絞って整理します。
- 建設分野が「二段階審査」になる理由と、逆算のスケジュール
- 月給制が必須である意味と、同等報酬の証明のしかた
- 人数制限・直接雇用のルール
- 受け入れた後に発生する報告・講習・巡回訪問
- 2027年4月の育成就労施行に向けて、いま判断すべきこと
📑 目次
1. 建設分野は「二段階審査」。約8か月前から逆算する
他の分野は、協議会に加入して入管に申請すれば進みます。建設分野は違います。国土交通大臣から「建設特定技能受入計画」の認定を受けてから、入管に在留資格の申請をするという順番になります。
その受入計画を申請するために、先に済ませておくべきことが揃っています。
| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 建設業許可 | 取得済みであることが前提 |
| ② | CCUS事業者登録 | 本人の技能者登録も後で必要になる |
| ③ | JAC加入 | 正会員団体の会員になるか、賛助会員として加入するかを選択 |
| ④ | 建設特定技能受入計画の認定 | オンライン申請。審査に数か月かかる |
| ⑤ | 入管への在留資格申請 | 認定証を添付して申請 |
受入計画の審査だけで数か月、そのあと入管の審査があります。人手が足りない現場ほど「すぐ来てほしい」となりますが、建設分野に関しては、登録待ちや認定待ちが長く縮められる部分がほとんどありません。手続きには余裕を持ってはじめることをおすすめします。
また、受入計画の申請では書類が16種類前後になり、書類どうしの数字が食い違っていないかが厳しく見られます。求人票、雇用条件書、賃金台帳、受入計画——これらの賃金や労働時間がバラバラだと、そこで手続きが止まってしまいます。
2. 月給制が必須。日給制のままでは受け入れができない
建設分野は、報酬を月給制で支払うことが要件です。日給制・時給制での受け入れは認められません。
趣旨は明確で、天候や現場の状況で稼働日数が変動しても、本人の収入が安定するようにするためです。梅雨時に稼働が減って手取りが大きく落ち込む、という状態を制度として認めていません。
同等報酬の証明
- 同じ職務内容・同程度の経験年数の日本人技能者の賃金台帳、実務経験を証明する資料が必要です
- CCUSの能力評価(レベル)と処遇が連動していることが望ましいとされています
そして忘れられがちなのが昇給です。特定技能「建設業」の外国人材を受け入れる際、昇給は必須です。国土交通省や出入国在留管理庁の規定により、1年あたり月額1,000円以上の定期昇給(またはそれに類する昇給)を計画し、雇用契約書や建設特定技能受入計画に明記しなければなりません。
3. 人数制限があり、派遣は禁止
建設分野には、他の分野にない制限が2つあります。
特定技能1号の人数が、自社の常勤職員数を超えてはならない、という制限です。小規模な会社ほど早く上限に当たります。「3人まとめて」と考えていたら1人しか無理だった、ということが起こります。
② 労働者派遣は認められません
受入企業による直接雇用のみです。人手が足りない別会社に応援に出す、という使い方はできません。
②に関連して、実務でよく問題になるのが元請の現場に常駐させるケースです。常駐そのものが禁止されているわけではありませんが、日々の指示や勤怠管理を元請が行っている実態があると、実質的な派遣とみなされるおそれがあります。自社の職長が指揮し、自社が労務管理をしている形を、書類でも説明できるようにしておいてください。
なお、業務区分は土木・建築・ライフライン設備の3区分です。同じ区分のなかであれば、複数の作業に柔軟に従事させることができます。
4. 受け入れてからの「宿題」が多い
ここが、建設分野でいちばん抜けやすいところです。入管への届出とは別に、国交省側の手続きが走ります。
| やること | 時期 |
|---|---|
| 国交省へ「1号特定技能外国人受入報告書」を提出 | 受入れを開始したら速やかに |
| CCUS技能者IDを明らかにする書類を提出 | 海外から新規入国の場合、原則として入国後1か月以内 |
| FITSの受入れ後講習を本人に受講させる | 受入れ後おおむね6か月以内 |
| FITSの巡回訪問を受ける | 全受入企業に年1回以上 |
| 受入計画の変更申請・変更届出 | 記載事項に変更が生じたとき |
| 入管への定期届出 | 年1回(4月1日〜翌3月31日分を翌年5月31日まで) |
| 入管への随時届出 | 契約の変更・終了、行方不明など、事由発生から14日以内 |
入管への定期届出は、2025年4月から四半期ごと(年4回)ではなく年1回になりました。事務は軽くなりましたが、注意点が2つあります。
- 随時届出は14日以内のままです。頻度が減ったのは定期届出だけです
- この届出は会社自身が行う必要があります。登録支援機関が会社に代わって届け出ることは認められていません。支援を委託していても、届出の名義と責任は会社に残ります
そしてFITSの巡回訪問では、賃金台帳や出勤簿の確認と、本人への母国語での面談が行われます。認定を受けた受入計画のとおりに処遇されているかが見られるので、日々の記録が実態と合っていることが重要です。
5. 2027年4月、育成就労が始まります
技能実習に代わる制度として、育成就労制度の2027年4月1日施行が決まっています。
いま技能実習生を受け入れている建設会社では、在留期限と施行日の関係で、次のキャリアパスを早めに判断しなければならない方が出てきます。特に、技能実習2号を比較的最近開始した実習生は、技能実習3号への移行ができなくなる可能性があり、特定技能1号への移行を前提に動く必要が出てきます。
そして、ここまで見てきた建設分野の手続き——JAC、CCUS、受入計画認定——は、移行の場合も同じように必要です。在留期限の直前に動き始めても間に合いません。いま社内にいる実習生の在留期限を一覧にして、逆算するところから始めてください。
あわせて考えたい「定着」
特定技能は、技能実習と違って同じ分野のなかであれば本人の意思で転職できます。手間と費用をかけて受け入れたのに、1年で別の会社に移ってしまった、という相談は珍しくありません。
理由を聞くと、賃金も大事ですが、住まいの不便さ、体調を崩したときや仕事、生活の悩みを相談できる相手がいないこと——このようなことが転職の要因になるそうです。義務的支援は、最低限やるものではなく、残ってもらうための仕組みとして設計するのが結局は近道です。
まとめ
- 建設分野は国交省の受入計画認定 → 入管申請の二段階。就労開始の約8か月前から逆算する
- 月給制が必須。日給制の会社は賃金体系の見直しが必要になる
- 常勤職員数を超える受け入れは不可。労働者派遣も不可
- 受入報告、CCUS技能者IDの提出、受入れ後講習、FITS巡回訪問、入管への届出——受け入れた後の宿題が多い
- 2027年4月の育成就労施行に向けて、いる実習生の在留期限から逆算して判断する
受け入れを決める前に、一度ご相談ください
みらいリンクでは、建設業のバックオフィス実務を12年、外国人支援を8年経験したスタッフが、準備から就労後の記録・届出まで、現場の目線でサポートしています。
- 自社が何人受け入れられるか、要件を満たしているかを一緒に確認します
- 賃金体系の設計と、同等報酬の説明資料の整え方をお伝えします
- CCUS登録、JAC加入、受入計画認定の順番とスケジュールを組み立てます
- 日報・出勤簿・CCUS就業履歴が一致する記録のしくみづくりをお手伝いします
- 在留資格の申請手続きは、提携行政書士と連携してご案内します
「受け入れてから慌てる」のがいちばん大変です。検討の段階で構いませんので、お気軽にお声がけください。
TEL:080-2156-4599
Mail:info@ny-partners.jp
※本記事は2026年8月時点の情報をもとに、出入国在留管理庁、国土交通省、(一社)建設技能人材機構(JAC)、(一財)国際建設技能振興機構(FITS)の公表資料を参照して作成しています。制度改正が頻繁に行われる分野のため、実際の手続きにあたっては最新の情報をご確認ください。


